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涼介「…ごめん、A！
今日…そっち行けない」
A「…え？」
浮上していた気持ちが、
破裂した風船のように割れて沈んでいく。
涼介「えっと…、
突然、事務所の用事入っちゃって…
どーしても抜けらんねぇ、から」
A「……あ…そっか…」
巾着の紐を、
指に跡が付くくらい握りしめて
涼介に見えるわけじゃないのに
無理矢理に笑顔を作る。
A「あ〜…もう…しょうがないなあ。
それなら、仕方ないね」
今回だけは許してあげよう！
と、思ったより明るい声で言えた。
その台詞を、自分がどこか遠くで聞いていたような感覚だった。
涼介「…マジでごめん！
今度絶っ対埋め合わせする！」
A「はいはい。
期待しないで待ってる」
何度も謝る涼介に
またね。と言って、
電話を切った。
A「…あ〜あ。
どうしよっかな…」
その場でしばらく、
スマホをぼんやり眺めてから顔を上げた。
誰かを呼び出そうにも、
こんな時に誰も思いつかない。
中学の時の友達とは
卒業以来、疎遠になってしまったし。
圭人は誘えば来るかもしれないけど、
なんかそれもオカシイ。
ーーーーーーーーーー侑李、
一瞬、頭に浮かんだ名前を
すぐに隅っこに追いやった。
侑李だって、ここまで来るのに
一時間近くはかかる。
わざわざ、私と一緒に
花火を見る為だけに来るはずもない。
A「…何…やってんだろ、私」
浴衣まで着て、
勝手に気合なんて入れてた自分が
滑稽で恥ずかしい。
長い、長い溜め息を吐いて
軽く寄りかかっていた壁から体を離した。
(もう、帰ろ…)
その時。
「A？」
自分の名前を呼ばれて、
声のした方を振り向いた。
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作者名：環
| 作成日時：2016年9月5日 23時
