トルアイアングル...Ryosuke&Yuri... (ページ28)

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ざわざわざわ。

時計台の下でその他大勢の人に紛れながら、
空を見上げる。

(…飛行機からも花火って見えるのかな？)

夕焼けの中を飛行機が横切った。

浴衣の襟を整えながら
静かに溜め息を吐く。

周りでは、
同じように時計を見上げていた人達が
相手を見つけてどんどん入れ替わっていて。

同じように辺りを見渡すけど
…涼介の姿は見当たらない。

(遅い、なぁ…)

用があるから五時半に時計台で待ち合わせよう、
と言ったのは涼介だ。

(他に予定ないって言ってたくせに、)

(人には一分でも遅れたら怒るくせに、)

もう時間は六時を過ぎていた。

(…何か、あったのかな…)

苛々を通り越して
さすがに心配になった頃、

巾着からスマホを取り出して
涼介の番号にかけようとした瞬間。

スマホが震えて画面に山田涼介、と
名前が表示された。

A「っ涼介！？」

迷うことなく通話の文字をタップして
名前を呼ぶ。

涼介「あ、A？」

A「A？じゃない！
何分待たせるつもり！？」

機械越しの呑気な声に気が抜けて、
思わず声を荒らげる。

A「今どこにいるの？
着いたら覚えときなさいよ…」

(チョコバナナも奢らせてやる。)

浴衣を見たらちょっとけなされて、
でも多分最後には
似合う、って言ってくれることを期待して。

(それで、遅刻はチャラにしてあげよ。)

そう決めていたのに、

耳に届いたのは謝罪の言葉だった。