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涼介「あ。そーだ、Aー、」
A「ばっ、涼介！前！
前見て運転してっ！」
自転車をこぎながら後ろを振り向いた涼介の肩を思い切り揺する。
目の前に迫っていた電柱を、
ぎりぎりでかわした。
涼介「……っっセーフ！」
A「セーフじゃないから！
ちょ、やっぱ私降りる！」
涼介「だーってA、歩くの遅ぇんだもん」
もうやんねーから、と笑う涼介に
ならいいけど…と、
疑いの目を向けて溜め息を吐いた。
自転車が、風を切る。
後ろに立ち乗りして、
茶色い頭を見下ろした。
つい四ヶ月前までは当たり前だったのに、
それが嬉しいなんて。
一つずつ、
当たり前が消えていくのを感じた。
涼介「〜、な？」
A「え？……あ、ごめん。なに？」
涼介「だーからぁ、花火の日。
俺の友達も一緒に回ってもいいよな？って」
A「友達……って高校の？」
(それは正直嫌、かも)
涼介の騒がしい友達についていけない自分が想像出来て、胸の内で呟いた。
涼介「や、違う、事務所のやつ」
A「ああ…涼介の親友？
ライバルだっけ？」
涼介「あー、まあ…そんな感じ。
ほら前にさ、Aと同じ高校のやついるって言ったじゃん？
折角なら会わせてみたいし、
花火の日なら他の予定なくて丁度いいし」
そうしようぜー、と乗り気な涼介に、
仕方なく頷く。
(別に…涼介の親友に興味ないんだけどな…)
むしろ涼介を遠いところに連れていく事務所も、
親友だと言うその友達も、
どちらかと言えば嫌い…なのに。
でも、涼介と花火大会に行きたい、
その一心で承諾した。
だけど結局、
涼介の親友と会うことはなかった。
…少なくともその時は
そう、思っていた。
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作者名：環
| 作成日時：2016年9月5日 23時
