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A「あ…友達、が傘持ってたから
入れてもらって…」
涼介「…ふーん、まあ、いーけどさ」
地面を叩きつけるように、
雨はアスファルトに向けて一直線に落ちる。
街灯で水滴の筋が白くはっきりと捉えられた。
一歩、一歩、と歩くたびに水滴が撥ねて、
地面へと吸い込まれていく。
雨がローファーから染みてきて、
靴下のつま先を濡らす。
足にじんわりと不快感が広がって、
それがなんだか私の中のモヤモヤまで増幅させた。
友達、は侑李。
その傘に入れてもらっただけ。
それ以上も以下もある訳がなくて、
それだけが事実。
だけど、なんとなく。
涼介に知られたくない、
と思ってしまった。
涼介「うっわ、この道、すげぇ暗い」
数秒の沈黙の後、
突然話題が変わって、
眉をひそめて話す涼介に首をかしげる。
A「…なに、オバケでも出そうで怖い？」
涼介「バカ、違ぇわ。
…普通に危ねぇじゃん。
おまえここ一人で来んなよ？」
A「え、別に大丈夫だよ、
子供じゃないんだか、」
涼介「だめ。
…っつったらだめ。」
いきなり真面目な顔で見つめられて、
胸の奥がぎゅっとなる。
その視線から逃れるように、
仕方なくコクリ、と頷いた。
涼介「本当、さ。
傘もだけど。
気を付けなさいよ？
俺、いねーんだから」
目的地のお店の前で傘を閉じて、
私の頭をぽんぽん、と叩いて笑った涼介。
この時の言葉の意味を。
もっと、
ちゃんと分かっていれば良かった。
でも、分かっていたとして、
私に何が出来ただろう。
涼介の心を変えることは
きっと、
出来なかったと思う。
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作者名：環
| 作成日時：2016年9月5日 23時
