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涼介「んー」
A「どしたの？涼介」
試験が終わって教室を出てから、
ずっときょろきょろと辺りを見回している涼介に、帰らないの？と声をかける。
A「誰か探してる？」
涼介「ん？んー、ここ受けるって言ってたと思うんだけど…」
A「え、誰が？友達？」
涼介「そ、同じ事務所のやつ」
A「へー…でもこの人の数じゃ多分見つからないよ」
涼介「だな。ま、いっか」
帰るか。と、
マフラーを巻き直した涼介の後を追いかける。
試験のことは忘れたように、
卒業式準備の話をする涼介に頷きながら、
鞄をぎゅっと握りしめた。
バレンタインデーは涼介が受験で。
作れなかったチョコレートの代わりに
昨日、勉強の合間に焼いたチョコクッキーが鞄に入っている。
涼介「なあ、A、聞いてる？」
A「え？ごめん、聞いてなかった」
涼介「は、おまえ、ひっでー」
A「あは、ごめんごめん。
…じゃあお詫びに。
はい、これ」
タイミング良く、鞄から箱を取り出す。
A「半月遅れだけど、バレンタイン」
涼介「うそ、まじ？
今年はないかと思ってた」
A「息抜きにね。作ったの」
すんなりと受け取ってくれたことに
ホッとしてそっと息を吐く。
A「というわけで、ホワイトデーはよろしく！」
涼介「なんだよ、結局それかよ…」
A「当たり前じゃーん」
真剣に意味を取られないように
冗談で思いを隠した。
この時、伝えていれば。
未来は全く違ったのかもしれないね。
でも、その時の私はただ、
涼介と二人で、
同じ高校に通えることを願っていた。
それが、叶わないとは知らずに。
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作者名：環
| 作成日時：2016年9月5日 23時
