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受験票、
生徒手帳、
筆箱、
参考書、
受験の味方のお菓子と、
あとお守り。
前の日に準備しておいた受験セットを
鞄の中に入れていく。
「Aー！
涼ちゃんが迎えに来てくれたよー！」
A「はーい！今行く！」
階下からの母親の呼び掛けに叫び返す。
ちらりと、｢それ｣を視界に入れて
手を伸ばしたり引っ込めたりする。
散々迷った挙句、
机の上の、綺麗に包装した小さな箱を
鞄に詰めた。
A「ごめん、涼介。お待たせ」
母親と楽しそうに話していた涼介が、
階段を駆け降りて来た私に遅い、と笑う。
A「ごめんて言ったじゃん」
「A、受験票持った？」
A「ん、持ったよ」
「筆箱は？財布は？」
A「持った持った。行ってきまーす」
心配そうな母親を安心させるように笑って
小さく手を振り、
涼介と二人で家を出た。
A「うわ、さむっ」
頬に当たる風の冷たさに、
思わず首をすくめた。
濃紺のマフラーを
ぐるぐると首に巻きつける。
A「放射冷却って言うんだっけ…
こういうの」
涼介「は？何それ、知らねー」
雲一つない空を見上げて呟いた。
その息まで真っ白。
涼介「A、鼻の頭赤」
A「うるさいなぁ。
涼介だって寒いくせに」
鼻の頭を手で隠して、隣を睨む。
涼介だってマフラーでぐるぐる巻き。
それに。
隙を見て、
涼介のコートのポケットに手を突っ込んだ。
A「ほーら、やっぱり。カイロ発見！」
涼介「ちょ、何すんだよ。返せって」
A「やーだよ。あぁーあったかぁ」
人口の温かさを頬にあてて、目を細めた。
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作者名：環
| 作成日時：2016年9月5日 23時
