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顔は見えなかったけど、声が震えていた。
泣いている、と思った。
そうしたら、私の目からも涙が零れた。
彼につられたのではなくて。
自分たちが、
こんなところまで来てしまったということに。
時間が流れて、
二人が大人になってしまったということに。
どうしようもなく、泣けてしまった。
そしてそのまま彼は私をベッドに押し倒した。
涼介「A…、結婚なんかすんなよ。
時間かかるかもしんねーけど…
俺とまた一から作り直してこうよ。」
彼の瞳から、涙が私の顔や胸にぽろぽろと零れ落ち、私は動くことができなかった。
懐かしくて、優しい二人の思い出の時間。
いつまでも輝き続けるであろう青春。
初恋の記憶。
あのキスも。
けれど今、私の頬に当てられた手はゴツゴツして
私の知らない大人の男の人の手だった。
二人が初めてキスをした日とは明らかに違う。
あんなに、あんなに好きだったのに。
A「……ごめんなさい。」
私も泣きながら、そう言った。
本当は何もかも捨ててこの腕の中にいたかった。
けれど、もう。
好きだけじゃ、うまくいかないんだって、
どうにもならないんだって、
大人になった私は
分かってしまっていたから。
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作者名：環
| 作成日時：2020年9月12日 19時
