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「なんで…………、だよ。」
戸惑いながら彼はその大きな手で私の頬に触れて、
言った。
私は彼の顔を見れなかった。
A「決まってたこと、だから。」
どうにか顔を上げて見ると
彼は今にも泣きそうな瞳で私を見ていた。
もしも、
もっと早くそんなふうに見つめてくれていたなら。
もっと早く気持ちを訴えかけてくれていたなら。
違ったんだろう。
私が欲しかった、二人の未来への言葉をくれていたなら、
こんな結末を選ぼうとはしなかったかもしれない。
こんなふうに疲れてしまう前に、
どうしてこの手で私を包み込んでくれなかったの。
中学生の頃みたいに、
どうして私を一番に好きでいてくれなかったの。
でもきっと、そういうふうにできていた。
こうなることになっていた。
あの日、偶然再会した日から、きっと。
そう思えばこの何週間かを、
楽しかった夢みたいな時間で終わらせられる。
けれど、彼は言った。
「なんでだよ……。」
もう一度。幼かった頃とは違う、すっかり大きくなってしまった体で私に抱きつきながら。
「なんで、こんなふうになったんだろうな、俺たち。
ただ昔みたいに好きで、会いたくて、一緒にいたかっただけなのに。
どうして、たったそれだけのことが……。」
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作者名：環
| 作成日時：2020年9月12日 19時
