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名前を呼んで、
抱き締めて。
唇を重ねようとしたところで、
私は「風邪が伝染るよ。」と嘘を吐き
顔を横に向けた。
しかし彼は「いいよ。」と言って、キスをした。
拒めなかった。
山田くんがこの間してきた、キスのように。
そして優太の体温を感じながら、
山田くんと、その彼女のことを想った。
彼らもこんなふうに
愛し合ったりするのだろう、と。
自分の立場も忘れて、
胸がチクリと痛んだのを感じた。
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マスメディアの効果は予想以上に私を疲れさせた。
職場ではなんとなく嫌な視線を向けられ、
友人からは心配とも好奇とも分からない連絡がくる。
そして山田くん達も当然、
マスコミに追われているようだった。
テレビで見た、彼女の「別れていません。」という
発言だけは確かだった。
婚約中の一般人と、
山田くんが浮気をした。
世間ではそういう共通認識だろう。
私だけは悪くありません、なんて。
そんな顔をしてるように見えるのだろうか。
同僚の女の子に言われた。
「結婚するんじゃないの?何考えてんの?」
A「結婚、するつもりだけど。」
「だけど、何?」
それ以上、私は何も言えなかった。
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作者名:環 | 作成日時:2020年9月12日 19時