26...(side R) ページ26
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でもあの時、あの瞬間。
俺は見逃さなかった。
Aの薬指が光っていたこと。
結婚した、のか?
すんのか?
どっちだ?
隣にいた男が旦那かよ。
それから胸の奥がずっともやもやしっぱなしで、
自分の中の正直な気持ちに気付かされる。
会いたい。
会って話がしたい。
今の気持ちを正直に伝えたい。
一種の賭けのような思いで、
俺はAに電話をかけた。
番号が変わっていなかったら。
もし、彼女が出てくれるなら。
祈るような気持ちだった。
『…山田くん?』
電話の声は間違いなくAだった。
俺の知っている柔らかい声が、俺の名を呼ぶ。
俺の番号をまだ登録していてくれたこと。
俺だと分かった上で電話に出てくれたこと。
その程度のことが、こんなに嬉しいなんて。
初恋の威力、ってやつかもしれない。
『あ、うん……俺。
えっ……と番号、分かったんだ?』
『……うん。山田くんも。』
正直、電話が繋がった後のことは考えてなかった。
嬉しいと思った次の瞬間、
唐突に緊張がやってきて、
馬鹿みたいに心臓が暴れ出して、
身体が熱かった。
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作者名:環 | 作成日時:2020年9月12日 19時