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スマホが何度か震えていた。
いつしかそれもなくなって、
コール音が家の中に木霊する。
家族は全員揃っているはずなのに、
誰も受話器を取ろうとしない理由は１つ。
誰もが、続いて受話器に駆け寄る足音を予測していたから。
何度注意されても携帯の充電を切らしてしまう私に、しょっちゅう電話がかかってくるものだから、我が家の電話をとる係は専ら私だった。
それがここ数ヶ月、当たり前の光景となっていた。
ただ、それだけのこと。
けれど、コール音は鳴り止まないどころか、
足音も聞こえてこない。
こんなことは、その足音の主になるはずだった私にしか予測のつかなかったことだった。
「Aー！…A、電話！知念くん！」
痺れを切らしたようにコール音を遮ったのは母親だったようだ。
受話器を手にしているのであろう忙しない足音が、私の部屋のすぐ前まで迫ってきた。
「A！！電話だってば！」
そうして無造作に開け放たれた扉の先には、
闇が待っている。
「A？寝てるの？」
暗闇の中で布団にくるまっている私を見つければ、母親はそう言った。
後は控え目に扉が閉じられたら、
それでいい。
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作者名：環
| 作成日時：2019年2月23日 10時
