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留めることのできない想いが、溢れ出す。
A「―――、」
五月蠅いほどに早鐘を打っている心臓の音は、
侑李に伝わっているだろう。
一連の出来事に驚いたからだと言えば説明が付いたかもしれない。
顔が赤く染まっていることも、
もしかしたら弁解出来たかもしれない。
けれど、きっとこれは説明できない。
これだけは、どうすることも出来ない。
侑李「……A、……え…？」
このときの私は、
こんなにも近くで侑李の目を見つめる私は、
彼に恋をしている表情をしていた。
A「……、離して……っ、」
私の目は、彼に恋をしていた。
彼に焦がれる、そんな目をしていた。
絞り出した私の声に、
侑李は戸惑うように私を解放した。
侑李「A、」
A「ごめん、私、……ごめん、」
彼が、気付かないはずがない。
侑李の困惑した表情がそれを物語っていた。
だってそれはきっと、
侑李がいつも店長に向けていた目だった。
私が大貴に向けていたはずの目だった。
私たちは、いつもお互いの近くで
それを見てきたんだ。
恋をする目を、いつも見てきた。
A「ごめん、侑李……！」
もう、彼の傍にはいられない。
そう思った。
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作者名：環
| 作成日時：2019年2月23日 10時
