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A「……ありがと。」
手渡されたココアのミニペットボトルを頬に当てながらお礼を告げる。
じんわりと温かいそれは、私の頬に少し熱すぎるくらいの熱を運んできた。
しかし、それでもペットボトルを離すことは出来ない。
こんなにも外は寒いというのに、
私の顔は不思議なくらい熱を帯びていたから。
ココアの熱のせいでも、風邪の類でもない。
ずるい優しさが、私の頬を染め上げる。
A「……熱いね。」
侑李「冷たいのが良かった？」
A「ううん。嬉しい。」
熱いのはココアじゃない、とは言わなかった。
…言えなかった。
侑李「そろそろ本腰入れてる感じ？就活。」
A「あー…うん、そうだね。」
色々な言葉を飲み込んで、侑李と並んで木枯らしの吹く並木道を歩いた。
小気味のいい音を立てて開けたココアからはうっすらと湯気が立ち上る。
それを目を細めて見つめながら、侑李に相槌を打つ。
侑李の方は、道行く真新しいスーツ姿の男女がピカピカの鞄を手に歩いている様を見つめていた。
侑李「Aは僕と逢ってていいわけ？」
にやり、と浮かべるのはまたもや意地悪な笑み。
此方に向けられた視線が私を覗き込んだ。
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作者名：環
| 作成日時：2018年12月18日 15時
