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「Aには気ぃ遣わなくていいから楽だわ。」
大貴にそう言われたのは、
いつのことだったか。
面倒事が嫌いな彼にとって、
それは最高の褒め言葉だったんだ。
そのはず、だったんだ。
それというのに、遡ること更に数ヶ月前。
彼は、大貴は、
あっさりと彼女を作った。
侑李「あれには、敵わないね。」
新人アルバイトとして店に入ってきた彼女は、
侑李よりも私よりも身長が低くて。
私よりも、愛嬌があって、何処か放っておけない雰囲気を身に纏っていて、笑った顔が幼くて、可愛くて。
私よりも、大貴の隣が似合っていた。
侑李「…そんな変な顔して。馬鹿じゃないの。」
初めて侑李が私の頭を撫でてくれた、その日。
必死で泣くのを堪えていた私に溜め息を吐いて、
優しい目をしていた。
堰を切ったように私が泣き出すと、
一緒に辛い顔をしてくれた。
きっと自分を重ねて見ていたのだろう。
侑李の想い人ーー、
店長に好きな人がいると教えてくれたのは、
私が泣き止んだ後だった。
付き合ってはいないが、偶にデートをしているらしく、凄く幸せそうだ、と告げた彼の表情を忘れない。
私もまた、彼に自分を重ねて見ていたのだと思う。
そうして私たちはお互いに毒を吐きあいながら、
夫々の想いを護り続けてきたんだ。
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作者名：環
| 作成日時：2018年11月3日 16時
