フェイクラバーズ…Yuri.C (ページ43)

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そういえば、私たちは喧嘩らしい喧嘩をしたことはない。

これが、侑李の言う、

『必死にならなくて済む、適度な距離感』

なのだろうか。

侑李「踏み込み過ぎない、踏み込まれ過ぎない。一緒にいたい時にいればいい、」

侑李はいつでも一方的ではあったが、強要されたことはなかった。

あからさまでありながら、
それでも至極自然に私の一歩前で手を引いた。

いや、実際に手を繋いだことも、なかったけど。

侑李「そういうのが嫌になったら別れればいいよ。普通の恋人みたいに、さ。」

A「…うん。」

虚しくなったことは確かにあった。

だけど、うんざりしたことはない。

侑李の距離の取り方が上手いからなのか。

お互いに好きなわけではないのに一緒にいる恋人だって、他にも結構いるかもしれない。

変に頑張らなくていいから、気が楽なのかもしれない。

そういう世間のカップルが長続きするのかどうかは知らないけれど、ただ。

侑李「まあ、僕はAと居るの、割と好きだけどね。」

ただ、
彼と一緒に居続ける理由があるのだとすれば。

侑李「なんか落ち着く。」

A「…うん、私も。」

それだった。

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