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「A、」
顔を上げて甘い声を囁く大ちゃんに応えるように、目を閉じる。
優しく唇に触れるような口づけが与えられると、それを皮切りに何度も角度を変えて、啄むような口づけが落とされた。
このまま、甘い空気に流されるように――
そう思った矢先、
ゆっくりと大ちゃんが顔を離した。
不思議に思って顔を見れば、どこか熱のこもった目を抑えるように、大ちゃんは体をそっと離した。
大貴「…A、お土産見た？」
A「ん？うん、お菓子いっぱい届いたよ、ありがとう。」
大貴「マトリョーシカは？」
A「動物の？可愛かったから飾ってる。」
ニコニコと嬉しそうな大ちゃんにそう答えると、
途端にきょとんとした顔に変わった。
大貴「え、中見てないの？」
A「中？そう言えば時間なくてブタまでしか…玄関に飾ってるけど。」
大貴「…………、」
言葉を失っている大ちゃんに疑問を抱きながら、その場を離れてそろそろと玄関へ向かった。
靴箱の上には今朝方置いた、ライオン、トラ、ブタ…と絵の施されたマトリョーシカが三つだけ、並んでいる。
大貴「…Aとは一緒に居てラクだし、くだらねー喧嘩もしないし、順調に進んでるなーって。
…ま、そう思ってたのは俺だけだったみたいだけど？」
左から順に中を覗いてみる。
大中小、と開けていけば、
マトリョーシカには更に小さな人形が入っていた。
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作者名：環
| 作成日時：2018年8月26日 15時
