78 ページ29
.
頬を冷たい風が撫でていく。
秋風が吹き抜ける夜空は、ひんやりとしているのに、緊張のせいで体は熱かった。
家に大ちゃんが来ていたら、どうしよう。
雄也にああ言うまでに三日かかった。
本人と対峙するかもしれないと考えれば考えるほど、自然と足が重たくなる。
もし会ったら、と想像すれば胸の音が妙に大きく響くいて、ただの帰路なのに一歩進む度に勇気が必要だった。
緊張する中、自宅の建物前に立つ。
心を落ち着かせながら階段を上りきり、
顔を上げても、目の前の廊下には誰もいない。
ポストを見れば、不在の間のチラシがぎゅうぎゅうに詰まっていた。
就活のためにとっていた新聞も山盛り。
肩にかけてある鞄を開いて、ポストから抜いた紙切れを自棄になりながら突っ込む。
この状態を見れば、大ちゃんがうちに来ていないことは明確だった。
心が萎んだのに気が付く。
どこかで大ちゃんが来ることを期待してたなんて。
自分から逃げておいて、本当に私は大馬鹿者だ。
安堵できるはずなのに、
却って気持ちが不安定に揺れる。
しょんぼりしながら鍵をあけ、静かに扉を開くと、長方形の紙切れが一枚落ちた。
一先ず荷物を中に入れて扉を閉め、なんだろう、と拾い表を向けると、それは不在配達届。
「なに…誰？」
詳細には雑貨その他と書かれている。
送り主は、有岡大貴。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：環
| 作成日時：2018年8月26日 15時
