52(side D) ページ3
side>＞＞Daiki
A「っ、…っ、…っ！」
Aは一度びくりと震えると、後ろについていた手を前に持ってきて、よろよろと危なっかしい動きで扉の元へとやってきた。
彼女のおかしな動きを不思議に思いながら、
自分の元へやってきたAを見て目を見開く。
Aの顔は青ざめ、
どこか怯えたような表情をしている。
尋常ではないその様子に、焦りを滲ませた。
何？
何なんだ？
大貴「A、開けてよ。ねえ、」
近付いてきたAに催促すると、
ロックのかかった扉が一度閉じられた。
扉の向こうで、かけられていたロックを外す音がするのを真夜中、
静かな廊下に一人立ち、歯痒い気持ちで待った。
ガコン。
ロックを完全に取った音が聞こえ、Aが扉を開けるのを待つことなく勢いよく扉を開けた。
暗闇の部屋に、廊下の明かりを差し込む。
明かりに照らされたAは泣いていて、指先が震えている。
大貴「A？」
玄関の中に一歩進んで呼び掛けても、恐怖からなのか声が出ていない。
膝もガクガクと震えている。
Aが俺を見つめる縋るような視線に思わず扉を支えていた手を離し、肩を引き寄せた。
自分の胸元にAの頭を引き寄せると背中に腕を回し、強く抱き締める。
後ろで支えを無くした扉が、
静かに閉まる音がした。
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作者名：環
| 作成日時：2018年8月26日 15時
