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気だるい体をキッチンへ向けて、洗濯カゴをそっと置いたまま食器を洗いに向かった。
キッチンの中へ入ろうとしたとき、後ろから機械音がして振り向く。
ローテーブルの上のスマホが揺れた。
メッセージの通知で画面が光っている。
近付いてスマホを確認すると光くんからで、内定をもらえたという報告の内容だった。
早速、おめでとう、と返事を打って、
特に理由はないけど画面を伏せてテーブルに置く。
ふいに、傍に見えた黒い、それ。
大ちゃんの、スマホ。
駄目なのは分かっている。
耳を澄ますと、向こうからシャワーを浴びる音が聞こえた。
恐る恐る、黒いスマホに手を伸ばす。
手に取ると、季節はずれの汗がじわりと浮かんだ。
ロックのかかっていないそれは、簡単に複数のアプリが並んでいるホーム画面を表示した。
いけないことだと分かっていつつも、手を止められない。
よく使っている、緑の吹き出しのアイコンを押す。
赤い新着のマークは何もない。
トーク一覧を開くと、聞いたことのある名前に紛れて知らない名前も複数出てきた。
『ちゃん』『まっすー』ニックネームで登録されているものや、フルネームで登録されているもの。
内容を見るつもりなんて、なかった。
だけど、私の目は明らかな女性の名前に釘付けで、
震える指先でそのトークルームをタップしてしまった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年8月26日 15時
