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怖かった。
私は、全てを知ることが。
涼介の中に、
もう、自分はいない、と示されることが。
だから蓋をした。
見てしまわないよう、
聞いてしまわないよう、
探してしまわないよう。
ただ、怖かった。
涼介を見ても目も合わず、
涼介にかける言葉も届かず、
何をしても拒否をされて、
全身で、私を否定されることが。
それから、何もできなくなった。
二人が、二人で離れていって、
やがて別々のものになって。
もうこのまま、
終わってしまうものなのかと、
泣きながら、
でも繋ぎ止めることができなかった。
素直に、無駄なものなんて捨て去って
手を伸ばしてみれば、
あなたはちゃんと、
手の届くところにいたのに。
抱き締め返したその体の感触に、
もう言葉が出なかった。
手探りに、必死に、
繋ぎ止めることしか出来なかった。
それで良かった。
それ以上のものは要らなかった。
欲しかったのはいつだって、あなただけ。
夏を拭い去る風に乗って、さよならを言う。
泣き続けた時間に、
一人で想いを募らせるだけの時間に、
さよなら。
季節は巡る。
もしかしたらまた、
泣き続けるときが来るのかもしれない。
だけど、きっと夏の終わりに吹く風に気付かされるのは、初めてあなたとキスをした、あの日の気持ち。
これから何度でも思い出すだろう。
そうしたら、また、
あの時のようなキスをして。
夏と一緒に溶けてしまいそうな。
やっぱり、
どうしたって、
私はあなたが好きだから。
メルトサマー
END.
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
