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教室で喧嘩なんて、
A「だめ、
涼介っ！」
思わずその名が飛び出ると、あいつの硬く握った拳は一瞬ピタリと止まり、でもその些細な間に伊野尾君の右手があいつの顔に当たった。
その勢いのままガタン！と大きな音を立てて
机に手をついた。
少し距離のできた二人の間に割り入って、
もうやめて、と興奮してる伊野尾君の前に立つ。
伊野尾君は私に目を留めて、見開いていた目を息吐くほどに少しずつ平常へ戻していった。
逆立っていた空気を解いて、
握っていた手の力を抜いて、痛んだ口元を拭う。
A「…大丈夫？血、出てる。」
慧「ん、」
A「保健室、は、まずいよね。
絆創膏貰ってくるから、水道かどこか、」
伊野尾君の手数よりずっと多かったあいつのせいで、伊野尾君の目元は腫れて、口端は切れ血が滲み出していた。
まさかこんな顔でみんなのところになんて行けないし、保健室にだって行けない。
先生に見つかったら大変だ。
私は伊野尾君を連れてとにかく手当てが出来そうなところを求め教室を出た。
あいつの元へと集まる男子たちの隣を通り過ぎる隙にそっと其方に目をやると、
彼らの間から穏やかさを取り戻せないままの暗い目と視線が重なって、
寒気と、胸の痛みを感じた。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
