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あいつは別に、
私のことが好きな訳じゃない。
ただ、惜しくなってるだけ。
そう、なのかな。
確かに、伊野尾君と何もなければ、
あいつが私に何をしてくることも、
こんな風に電話をかけてくることも、
なかった気がする。
私だけ、なのかな。
結局いつまでも、想っていたのは。
涼介「どーでもいいわ、そんなん。」
通り抜けた生ぬるい風に乗って、
薄暗い中にぼやりと生まれた低い声。
ハッと気づいて顔を上げると、
道の先に、あいつが立っていた。
涼介「何してんの。」
慧「久し振りに会ったから話してただけだろー。」
涼介「……おまえに聞いてねぇよ。」
不機嫌そうな声だけど、表情はもっと不機嫌そう。
………でも、いつもあいつは私の心臓を騒がせるばかりなのに、何故だか今は、ゆっくりと静まっていってる。
涼介「A、こっち。」
その言葉はちゃんと、私に向かって伸びてくる。
涼介「………A、」
その声はちゃんと、私に向かって発されてる。
それをどうして、
拒否することが出来るだろう。
.
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
