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A「……っ、」
確かに、そうだ。
私、
慧「…やっぱAは、山田のことしか考えてねんだよ。」
A「そんなこと……、」
慧「あるっしょ。そーゆーことでしょ？
あいつのことしか頭にねーから俺よりあいつの心配するし、あいつの部活のことで頭いっぱいになるし、目の前にいる俺より今あいつがどうしてっかの方が気になんだよ。」
A「………！」
違う。
そう真っ先に言い返す自分が簡単に思い描けた。
でもその言葉は喉を通ろうともせずに留まって、
この世に生まれることはなかった。
事実、今の私の頭の中に在るものが、
あいつ以外になかったから。
A「………。」
慧「なんか言ってよ。」
A「…………。」
慧「そんなんじゃないって言ってよ。」
ああ、私はどうして。
沢山の大事なものを、
見過ごし過ぎていた。
慧「…違う、って言えよっ………、」
思いを精一杯押さえ付けたように、
それでも張り裂けるように、
その口から漏れた言葉は、余計に私を責め立てた。
深く落とした視線。
瞳は何色をしているかも分からない。
けれど私は確実にこの人を、
私を好きだ、と恥じもせずに言ってくれたこの人を、
流されるままに見過ごして、
あやふやに誤魔化して、
無視したんだ。
.
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
