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廊下で友達を見つけても、他の誰かと楽しそうでいまいち声をかけづらく、挨拶を交わす程度で通り過ぎてしまう。
今更教室にも戻れない。
ゆっくりゆっくり時間を潰しながら、
目的地を探す。
独りぼっちで可哀想な子になりながら、
私はとにかく真っ直ぐ廊下を歩いた。
「A？」
とぼとぼ足元ばかりを見て歩いていた私に声がかけられて、私はその声のほうに目線を上げた。
普通の目線よりもう少し上にまで目を上げて見たその人は薮君で、
そろそろ予鈴が鳴ろうとしているこんな時間に階段へ向かう私を不思議に思ったのだろう。
律儀に私を呼び止めた。
宏太「よ、久し振り。」
A「うん、久し振り。朝練お疲れ様。」
宏太「おー、さんきゅ。てかおまえどこ行くんだよ？もうチャイム鳴るけど。」
A「え、あー…ちょっと、お手洗い、にね…。」
宏太「トイレ？」
階段の手前、ついさっき、其処でトイレは通り過ぎたばかりで、薮君はトイレを指差して不思議そうな顔をした。
しまった。
無計画な返答は己の首を絞めかねない。
宏太「…A、何組？」
A「えー……。B組」
宏太「……ああ、そーいう…。」
大ちゃん同様、薮君もいち早く私の心境に気付いてくれた。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月8日 10時
