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A『え、ちょっと！何すんの！』
涼介『おまえ言ってもどーせ忘れっから書いてやってんだよ。』
A『は？何を…ってかマジックだし！
あんたバカじゃないの、ちょ、やめてよー！』
ぎゃーぎゃー騒ぐ私の手をあいつは離さず、
何かを書き付けて、それが終わると満足気に私の腕を離した。
太い字で掌から手首にかけて、
でかでかと黒い色が書かれている。
半泣き状態で何を書かれたのかと見てみると、
そこには数字が並んでいて、
どうやらあいつの携帯番号らしかった。
涼介『それ、俺のね。
後で着信残せよ？じゃな、』
そのままグラウンドの方へ行ってしまったあいつの足取りは軽かった。
いつも暑い暑いと太陽に文句を言っていても、
夏の陽射しはあいつの味方のようだった。
そうして、心の中に隠したものは、
抑える術をなくして流れ出た。
あいつが私を、
周りの子と同様に友達として見て、
友達として接しているうちは、
私もそれを返すことが出来ていた。
でもあいつが、会う度に私を見るから。
いくつかある席の中で私の隣を選ぶから。
事あるごとに私に構うから。
私の初な心は、
すっかりあいつの手中へと落とされてしまった。
そのせいで夏休みは嫌になるほど長かった。
外で蝉がミンミン煩く、
テレビじゃ高校野球が大騒ぎで、
目の前の宿題は減らない。
いつも通りの夏休みなのに、
あんなにも夏休みが長く感じたのは、
早く終わってしまえばいいと思ったのは、
初めてだった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月8日 10時
