ミオソティス...Daiki.A... (ページ19)

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今私たちが座ってるのは店の外に出ている席で、
歩道を歩いている人がよく見える。

ということは、
向こうからも私たちのことはよく見えるだろう。 

通るのは殆どが修学旅行生のグループ。

うちの学校の生徒に有岡と二人きりでまったりしているのを見られるのはなるべく避けたい、と漠然と思っていた。 

班の他のメンバーに悪いとかじゃなくて、
(いや、悪いことは悪いんだけど)

他の女子に妬まれるからとかでもなくて。

 じゃあ何だと訊かれたらよく分からなかったけれど、見られたら何となく居心地が悪くなる気がした。 

目の前の食い意地張ってる単細胞は、
そんなこと微塵も感じていないだろうけど。 

大貴「なー、A。あれ何の樹？」

 食い意地単細胞が突然、
食べ物以外のことについて言及したので
私は一瞬ポカンとした。

 歩道を挟んだところには、
通りに沿って樹が延々と植えられている。

有岡の指はそれらを指していた。

 A「え？…あー、桜じゃないの？」

 大貴「へぇ、物知り」

 A「何言ってんの。貰った資料に書いてあったじゃん。この辺の通りは桜の樹がたくさんあるって」

 大貴「そうだっけ？」

 A「そうなんですー」

 食べ物以外ろくに見てないんでしょ、と言うと
有岡は誤魔化すように、へら、と笑う。

全く、と溜息を吐くと有岡は、
通りの桜の樹をぼんやり見つめながら
ぽつりと呟いた。   