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指先からスッと全身が冷たくなっていく。
周囲の雑音が聞こえなくなる。
視界が暗くなる。
身体が痺れる。
目眩がする。
ああもう、何やってるんだろう私。
未練?
僻み?
情けない。
情けないけど。
(苦しい)
痛い。
(どうしよう。誰か)
誰か助けてーーーーーーー
大貴「A!…おま、大丈夫か?」
突如、音の無かった世界に有岡の声が飛び込んできて、それから身体を揺さぶられる。
それをキッカケに周りの音が戻ってきた。
だけど、依然視界は真っ暗のまま戻らない。
ひどく気分が悪い。
そんな揺さぶるなっつーの、と多分有岡だと思われる人物に抗議したいけれど、喉がカラカラに乾いていて声が出ない。
そうしたら肩に手が回ってきて
勢いよく抱き寄せられた。
(……え?!)
ひょっとして、これは物凄い展開になってるんじゃ、と一瞬思ったけれど、
くらくらする頭じゃ考えられない。
とりあえず、実際この体勢は楽だったので大人しく身体を預けておく。
「え、Aどうしたの」
大貴「何か気分悪いっぽい。落ち着くまで俺こいつと一緒にいるわ」
「まじ?俺たちも降りた方がいいか。って料金もう払っちゃったし…次降りるわ」
大貴「あー、いい、いい。落ち着いたら後から行くから、先回ってて」
有岡と班のメンバーの会話を、
遠くで起きていることのように私はぼうっとする中で聞いていた。
じゃ後で、と言う声。
扉が閉まってバスが走り去る音。
ようやく静寂が訪れて、
私はホッとして身体の力が抜けた。
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作者名:環 | 作成日時:2018年1月26日 17時