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少し待って来たバスは、有岡じゃなくても乗りたくないほど修学旅行生で混んでいた。
A「ほら有岡、バス乗るよ」
大貴「まじ?これいくわけ?」
この世の終わりみたいな顔をして有岡が立ち上がる。
バスにはうちの学校の生徒も何人か乗っているようだった。
見覚えのある制服を視界に捉え、
私の視線はある一点で釘付けになった。
大貴「A、前。進んでる」
有岡の声にハッとして、前に進む。
だけど、足取りはさっきまでとは比べ物にならないほど重い。
(なんで……)
何で今更こんなにショックを受けているのか、
自分でも分からない。
ちゃんと自分の中で結論は出ていたはずだ。
もうとっくに。
仕方ないんだよ、諦めるしかないよ、って。
なのに。
(ただ……ただ元彼が女の子と話してるだけじゃん)
女の子?
違う。
ただの女の子じゃない。
多分、彼女。
話してる慧の顔を見れば分かる。
あれは、以前私に向けられていた表情そのもの。
班のメンバーがバスに乗り始める。
このままバスに乗れば絶対気付かれる。
動揺してる自分を見られる。
彼は全然平気なのに、私だけ平気じゃない。
(私は、もう要らない)
そう思った瞬間、地面に張り付いてしまったかのように足が動かなくなった。
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作者名:環 | 作成日時:2018年1月26日 17時