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五月雨 ページ7

「じわり」、というような擬音がよく似合う梅雨入りの季節。ぐずついた天気が続く梅雨は、なんとなく気分が沈むのであまり好きではない。どこからか吹いてきた湿っぽく生ぬるい風が、草花の青を揺らした。空を見上げると青空を背景に薄い彩雲が広がっている。どうやら雨は降っていないようだ。しかし、湿り気のある独特の熱気が体に纏わりつく。あまりの暑さに「ここはサウナなのだろうか」と錯覚してしまいそうになるが、あいにくここはただの無人島である。吹き出した汗は雨戸の雫のように背中を滴り落ちていき、前髪は額にピッタリと張り付いた。地球温暖化による弊害が叫ばれて久しい今、私は少し早い初夏の訪れを感じとっていたのだった。

「やあ真宵クン、お散歩かい?」

声の主はジュンくんだ。恐らく買い物帰りなのだろう、両手に荷物を抱えている。

「うん、ちょっと気晴らしにね。…まあ、こんな気温じゃ暑苦しいだけだけど。」

「まるで仲睦まじいボクらの関係性を表しているようだね……なんてね、ハッハー!」

「うーん、そうだね………?」

イマイチ何が言いたいのかよくわからないが、まあ相変わらずといえば相変わらずだ。
ジュンくんとの会話を終えたあと特に行く宛てもなくフラフラと歩き回っていると、急に辺りがどんよりと暗くなった。鉛色の分厚い雲が空一面を覆う。

「うわぁ、雨降ってきそう…。傘持ってくるの忘れちゃったなあ……。」

一気に気温が下がり、冷え冷えとした不穏な空気感が漂った。雨が降る前の、独特なあの”匂い”。
案の定ポツポツと雨が降り始め、次第に髪の毛が水気を帯びていく。ミストのような細かい霧状の雨から粒の大きいシャワーのような雨へ変わり、次第にバケツをひっくり返したような激しい豪雨が襲った。目の前が光ったと思いきや、遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえてくる。荒々しい轟がズシンとお腹に響き渡り、恐怖で反射的にその場でしゃがみ込んだ。

(か、雷は高台に落ちるから大丈夫……でも、やっぱりあの音は苦手だ。家に帰りたいけど、結構遠くまで来ちゃったからなあ…。)

体がガタガタと震え始める。止まれ、止まれ、止まれ……。こんなことで怯えてはいけない、早く、早く家に……。
立ち上がろうとした瞬間、すぐ近くで落雷の音がした。フラッシュを焚いたかのような白い光に思わず首が竦む。目の前がじんわりと滲み始めたとき、初めて自分が涙を浮かべていることに気がついた。嗚呼、本当に情けないな。

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作品ジャンル:恋愛
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山ノ花 禊(元リャナ)(プロフ) - 最近この小説を見かけてはまった者です、更新再開嬉しいです! (1月22日 22時) (レス) @page17 id: 3f96a70ccb (このIDを非表示/違反報告)
新世界(プロフ) - うちゅうじんもどきさん» 返信本当に遅くなりました!申し訳ないです!語彙力を失うほど好きになってくれて嬉しいです! (1月22日 18時) (レス) id: 64837ede78 (このIDを非表示/違反報告)
新世界(プロフ) - MAREさん» 3年越しの返信になってしまい申し訳ないです!ありがとうございます! (1月22日 18時) (レス) id: 64837ede78 (このIDを非表示/違反報告)
うちゅうじんもどき(プロフ) - うへぇあ……えええええ……いやもう、ほんと……え……っ……すきです……(語彙力) (2021年10月18日 8時) (レス) @page18 id: fabe2279e9 (このIDを非表示/違反報告)
MARE(プロフ) - 面白かったです!更新まってます! (2021年3月7日 2時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:麻酔薬 | 作成日時:2020年5月20日 15時

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