頑張る君へ ページ9
藤ヶ谷の主演舞台が、無事千秋楽を迎えた。
「なるべく会わないようにしたいんだ。ごめん」
そう稽古が始まる前に告げられ、もちろん寂しさはあったけれど、役に真剣に向き合いたいという藤ヶ谷の強い意思に、俺のちっぽけなワガママなんて我慢するしかなかった。
しかし、募っていくのは後悔ばかり。
会えない寂しさじゃない。
目に見えて痩せていく藤ヶ谷に、俺は不安で仕方がなかった。
いつか俺の前から消えてしまうんじゃないか。
そんな戯言みたいな不安が俺の胸を埋め尽くした。
_____
「シャワー、ありがと」
「ん、おう」
風呂上がりの姿を見るのも随分久しぶりだな。
すっかり痩せこけた頬に、少し伸びた黒髪が、会えなかった時間の流れを感じさせる。
ぱち、と目が合うと甘い笑顔で微笑まれた。
「なに？」
「…痩せすぎじゃね」
「それ皆に言われるけど、別に体は大丈夫だよ？病気じゃないんだから」
ふふ、と機嫌良さそうに笑う藤ヶ谷はソファに腰かけて、床に座る俺を自分の膝の間に収めた。
ちら、と上を見ると、すぐにキスが降ってきた。目を閉じて素直に受け入れると、軽く触れただけで意外とあっさりと離れていく唇に拍子抜けして、俺は恋人の顔を見返した。
「なんか、久しぶりに北山とキスした…」
「…何改まってんだよ」
「やっぱり我慢した甲斐がある…何か幸せ過ぎて、やばい」
やばい、と言う恋人のやたらと整った顔は何故か眉間に皺が寄っていて、俺は立ち上がって藤ヶ谷の膝の上に向き合って座り直すと、そのまま眉間に口付けをした。
「何でそんな怖い顔してんの？」
「…こうしてないと、顔が緩む」
「別に緩んだって良くね？」
首に手を回しながら、むすっ、と尖らせた唇を優しく噛むと、藤ヶ谷の手が俺の腰を撫でた。
「…今日、本当にやばいかもしれない」
「だから良いって。明日どうせオフだから」
好きにして良いよ。
なんて口走ってしまうと、藤ヶ谷は一瞬にして態度を豹変させて、俺を押し倒した。
藤ヶ谷の目の前から理性が手放されていく。
そして俺は、どろどろに溶かされていくような感覚に陥る。
「ふ、っじがや…」
「ん…っ？」
ああ、やっぱり気持ち良いな。
と、素直に快感に従うなかで、藤ヶ谷を抱きしめた。
「よく、頑張ったね」
「…え？」
「もう頑張らなくて良いよ。」
ちゅ、と軽くおでこにキスをすると、ポツリ、と頬に涙が落ちてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 581人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ･･にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです･･ゆびわに気づいたたいぴ･･いつか!!!待ってます(*´σｰ｀)ｴﾍﾍ (2018年11月17日 19時) (
レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - (￣ｍ￣〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´；ω；`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで！って本気な玉ちゃんにｗｗやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春･･( *´艸｀)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック･･ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ！！！ と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(｀・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日･･いつもは光の中に身を置いているようなみっくん･･だからこその抱える闇なのかも(´；ω；`)ｳｯ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます！ 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ；∀；)！ この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております！また是非読んで頂ければ嬉しいです！ (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：魚
| 作成日時：2018年9月14日 22時
