貴方のものになりたい ページ40
「おーい藤ヶ谷」
はいはい、お呼びですか。
呼びかけに、ポン、と姿を現すと、いつものだらしない格好ではなく珍しく正装で着飾った飼い主がいた。
「…何だよその目は」
「いや、今日は正装なんですね。パーティーでも行くんですか?」
「ちっげえよばーか!」
おや、何だか随分とご機嫌斜めだ。
これはご機嫌を損ねない方が後々自分のためであることは、もう数百年この魔術師の使い魔になってから学んでいる。
「どうしたんですか」
苛立ちを全く隠す様子もなくソファに座りながら足を世話しなく動かす飼い主の膝の上に飛び乗った。
ペロ、と軽くその形の良い鼻を軽く舐めると、少し落ち着いたのか俺の頭を撫でてきた。
「下界で今日ハロウィンなんだよ」
「ああ、悪霊狩りですか?」
「あー、まじでだるい。宮田とかにでもやらせとけよ」
色っぽい手付きで俺のピン、と立った耳をいじって来るから、変にむずむずしてくる。
ハロウィンというのは、俺がこの魔法使い、北山さんに拾われるうんと昔から存在する祭りのことだ。
まだ人間が住む下界に、魔法使いが堂々と生活していた時代。
ハロウィンには、死後の世界の扉が開く。
秋の収穫物を祭壇に飾り、先祖が家に出迎える唯一の日。
しかしその日には、先祖の霊だけでなく、招かれざる魂と化した悪霊も死後の世界からやって来てしまう。
魔法使いは、身を守る術のない人間に、それらと同じ格好に仮装して仲間だと思わせるように教えた。
そして人間たちは祖先との束の間の思い出を唄い、宴を楽しむのだ。
・・・しかし当の魔法使いは?
悪霊狩りをこなすために、大混雑する下界に降りなければならない、というたいそう面倒な仕事が待っている日なのだ。
「俺も一緒に行きますから」
「えー、まじで行きたくない。着替えたけど本当に行きたくない」
うーん、どうしようかな。
ここ数十年、ハロウィンの悪霊狩りのお役目をありとあらゆる手を使って避けてきた北山さんだけれど、さすがに今年はもう言い逃れは出来ないだろう。
観念して正装に着替えたものの重い腰は上がらないようだ。
「んー、じゃあ、俺だけで行きます」
「駄目!絶対駄目!こんな可愛い子猫ちゃん行ったら食われるに決まってる!」
「じゃあ北山さんも一緒に来てください」
「ううう゛…」
唸りながら俺を抱き締める北山さん。
「…いきます」
581人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:魚 | 作成日時:2018年9月14日 22時