2人の短いお話 その2

君の好きなところ ページ1

「んー、好きなところかあ…」


雑誌の取材。
『それぞれのメンバーの好きなところは？』というよくある質問に、俺はいつも頭を悩ませる。

ううん、と頭を悩ませていると、隣のパイプ椅子にソロショットの撮影を終えた北山が座ってきた。



「…あれ、まだ書いてねえの？」



用意されてあるドリンクを一口含みながら、俺の回答用紙にちらり、と視線を向けられる。



「いや、書いたよ？」
「…ってお前、俺のとこだけ書いてねえじゃん」
「うん、北山のところだけ、書いてない」



ふうん、と一気に不機嫌そうな声になって、俺に聞いてきたのは、意外なものだった。



「じゃあさ、俺の嫌いなところは？」
「嫌いなところ？んー、そうだな」



北山の嫌いなところ。

目を閉じて、普段の生活を思い浮かべると、すんなり見えてくるから不思議だ。



「寝起きの機嫌が悪いところ。
喧嘩するとすぐベットで丸まってるところ。
酔っ払うとキス摩になるところ。
何回言っても髪乾かさないところ。
誰にでも触らせるところ。
一緒に寝ると布団奪ってくところ。」


「……もう良い」



一気に述べると、面と向かって嫌いなところを突き付けられた本人は、何故か俺から顔を反らした。



「え、ごめん。言い過ぎた？」
「違う…うるさい、本当、黙って」



そんなに傷付けてしまったのだろうか。

不安になって無理やり腕を引っ張って顔を見ると、北山の顔は真っ赤に染まっていて、俺と目が合うなり耳まで赤くなっていくようだった。



「……俺は、お前のその無自覚なところが嫌いなんだ、ぶぁーか！」



キッ、とまるで小動物が威嚇するかのように俺を睨んで北山は逃げていった。



「…何だそれ」



無自覚なところ？

よく分からないけれど、怒らせてしまったなら後で謝らなくては。


そう思いながら再びペンを握ると、真剣に考えるよりはもっと気楽に答えることにした。



『頑張り屋さんなのに、短めのジーンズを履いてくるところが好き』




ふふ、と自分で書いて思わず笑ってしまう。


俺が誕生日プレゼントであげたジーンズを愛用している様子は何度見ても、胸がきゅんとする。



嫌いなところもたくさんあるけれど、北山の好きなところなんて、それとは比べ物にならないくらいたくさんあって、俺には選べない。


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