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「ガヤさんからお誘いなんてめーずらしい」


ふんふん、とご機嫌に鼻歌混じりで買い物かごに商品を入れていく恋人に、俺は聞きたいことを聞けないでいた。


「あ、これは?どっち買うの?」

「それは、家にあるから大丈夫・・・」

「すごい。調味料、何でもあるね?ガヤさんち行くの久しぶりだからなあ〜、楽しみ」


駄目だ。玉森に何も言えない。

話し掛けようと伸ばした手が力無く垂れる。すると、手を握ろうとしたんだ、と勘違いしたのか、玉森はにっこりと笑って、かごを持っていない方の手で、俺の手を軽く持ち上げた。


「人前で、手握るなんて珍しいね?今日はあまえたなの?」

「ちっ、ちが、違うんです・・・」

「何で敬語?」


はは、と顔をくしゃっとさせて笑う玉森に、胸の奥が苦しくなる。

ああ、この笑顔が好きなんだなあ、と。


っていやいや、違う違う。
北山くんに、何を言ったのか聞かなきゃいけないんだ。


____


「いただきまあーす」

「いただきます」

「・・・うまっ!美味しい〜」


にこにこ、と俺の作った料理を頬張る玉森に、俺も嬉しくて、思わずにこにこ、とゆったりとした空気が流れる。


「俺の家のキッチンにも道具とか調味料揃えたらこれ作れる?」

「うん、作れるよ」

「じゃあ、必要なもの週末買いに行こ。外食よりもガヤさんの料理の方が何倍も美味しい。」

「そんな上手くないから・・・」


ストレートに誉められると、どういう顔をして良いか分からない。恥ずかしさと、嬉しさと、色んな感情が混じって、体が熱くなる。


「ほんっと、可愛い。まじで誰にもあげたくないから、他の人に手料理振る舞ったりしちゃ駄目だよ」


「あっ・・・そ、そのこと!」

「ん?」

「だから、そのことなんだけど」


何のこと?とビールを一口飲みながら、玉森は優しい目で、俺に聞き返してきた。


「北山くんに、何か、言った?」

「北山?ああー、うん。
会社の近くのコンビニで夕方、たまたま会ったんだよね」

「・・・それで?」

「ちょっと立ち話しただけだよ」


ピシャリ、試合終了。
きっと、玉森の口からもう何も明かされないだろう。


玉森と恋人関係であることを、恥ずかしいと思ったことはない。
人生で今が1番幸せだと胸を張って言えるし、一生、玉森の隣にいたい。

けれど、そんな公にして言えるような関係ではないと分かっている。

俺がどう言われても良いけれど、俺と一緒にいることで、玉森が傷つけられることだけは嫌なのだ。

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たいやき(プロフ) - 藤北目当てで読んだのに、『春』が1番好きで、何度も読み返しています!!あまり玉ガヤのBLは意外と読んだことがなかったので新鮮だったのと、『春』の藤ヶ谷くんがどたいぷすぎました。これからも頑張ってください! (2019年10月13日 1時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まきさん» コメント頂いていたのにお返事遅れてしまい大変申し訳ありません(*_*)! 短編の方で思いついた時にでも書いていこうかと思っておりますので、是非楽しみにしていただけると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2018年10月22日 17時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。以前に一回読んで、また読みたくなってしまい、読み返しました。とてもかわいい藤ヶ谷さんを見れて、楽しく読ませて頂いてます。『春』の続編を勝手ながら期待しております。 (2018年9月19日 11時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 白雪さん» コメントありがとうございます!私の中で藤ヶ谷さんは受けだと思っていて笑 北藤、玉ガヤ大好きなんです笑 そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わたリンさん» コメントありがとうございます!お返事遅れてしまい大変申し訳ありません( ;∀;)!春の続編いつか書きたいと思っておりますので、楽しみにしていてください! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年4月16日 21時

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