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「ミツ〜、じゃあねえ!また飲もうねー!」
「合コン、ぜってー忘れんなよ!」
「行かねえよ、ばあか!じゃあなー!」
酔っ払い二人と駅で別れ、一人で帰路に着く。
夜風が火照った体に気持ち良い。
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二階堂に先程誘われた合コン。彼女はいないけれど、今すぐに欲しいとは思えなかった。
面倒臭いのだ。
デートの予定を休日に入れるのも、交遊関係が拘束されるのも。
だから、学生時代も彼女をほとんど作らず、程好い距離の女友達と、一夜の関係を築いていた。
『遊び人だから、北山には気を付けたほうが良いよ』
そんな噂が囁かれ、それでも適当な俺を好む人もいるわけで。
だから、一途な人々を見ると、そんなの重くない?と余計なおせっかいを口出したくなる。
「・・・あれ」
自分のアパートのすぐ近くのコンビニに寄ろうとすると、明るい店内から出てくる見覚えのある姿があった。
「藤ヶ谷さん・・・?」
「えっ!あっ、き、北山くんっ?!」
そこにいたのは紛れもなく藤ヶ谷さんだった。
けれどスーツではなく、黒のカットソーにチノパンツと、ラフな格好を身にまとった姿は、ただの爽やかなイケメンで、会社での藤ヶ谷さんとはまるで別人のようだった。
「藤ヶ谷さん、家、ここら辺なんですか?」
「ち、違うんだけど、知り合いのマンションがここら辺で」
話し方は一緒だ。
でも何だろう。
藤ヶ谷さんって、こんな人だったっけ?
違和感がぐるぐると俺の中でうずくまっていると聞きなれない着信音が鳴った。
♪ー♪ー♪ー
「あっ、ごめん、電話、出るね」
「いえ、どうぞ」
藤ヶ谷さんは電話を耳に当てた。
「もしもし・・・うん。・・・大丈夫だよ?もう帰るとこだし・・・他に何かあるなら買うよ?・・・え?ごみ袋?何?・・・分かった。うん、待ってる。
話の途中にごめんね」
申し訳なさそうに電話をしまう藤ヶ谷さんに、俺は酔った勢いのまま質問した。
「今の、彼女さんですか?」
「え?ええ?」
「いや、何か随分仲良さそうだったんで。彼女さんかな、って」
「ちっ、違うよ」
顔を真っ赤にして否定する藤ヶ谷さんは、果たしてそれが肯定だと気付いているのだろうか。
「それ、彼女さんと飲むんですか?」
それ、とは藤ヶ谷さんの左手にぶら下がった袋に入った何本かの缶ビールだった。
「違うよ、そんなんじゃないって」
「・・・そうですか」
あのときと同じだ。
眼鏡の奥の瞳が揺れている。
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たいやき(プロフ) - 藤北目当てで読んだのに、『春』が1番好きで、何度も読み返しています!!あまり玉ガヤのBLは意外と読んだことがなかったので新鮮だったのと、『春』の藤ヶ谷くんがどたいぷすぎました。これからも頑張ってください! (2019年10月13日 1時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - まきさん» コメント頂いていたのにお返事遅れてしまい大変申し訳ありません(*_*)! 短編の方で思いついた時にでも書いていこうかと思っておりますので、是非楽しみにしていただけると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2018年10月22日 17時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。以前に一回読んで、また読みたくなってしまい、読み返しました。とてもかわいい藤ヶ谷さんを見れて、楽しく読ませて頂いてます。『春』の続編を勝手ながら期待しております。 (2018年9月19日 11時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 白雪さん» コメントありがとうございます!私の中で藤ヶ谷さんは受けだと思っていて笑 北藤、玉ガヤ大好きなんです笑 そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - わたリンさん» コメントありがとうございます!お返事遅れてしまい大変申し訳ありません( ;∀;)!春の続編いつか書きたいと思っておりますので、楽しみにしていてください! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年4月16日 21時