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「お前よくそれで32年間も生きてきたな」
「んん、何か人からすぐに好かれちゃうんだよね」
「いっぺん滅びろ」
「別に死にたいとかそういう欲は無いし、他人に見られるのが怖い、とか対人恐怖症とかではないだよな。
ほんと、俺のことどうでも良い、って思ってて欲しい。
もし俺が人質になって、『おい、こいつがどうなっても良いのか!』って犯人に脅されたら、『どうぞひと思いにやって下さい』って言ってくれるくらいの関係が良いな」
「いや、どんなシチュエーションだよ。まずそれは、北山じゃなくてその相手の人格に問題があるわ、こええわ」
「じゃあ、藤ヶ谷がもし犯人に俺がどうなっても良いのか、って聞かれたらどうすんの」
「・・・」
北山が犯人に捕まってる姿を頭に思い浮かべる。どうも非現実的すぎていまいち想像がつかないが、きっと俺は迷わず言うだろう。
「別にどうでも良い」
「だよな、お前はそういうやつだよな。ちょっとなにか期待してたけど、いや、どっちを期待してたのか分かんねえけど、とにかくお前はそういうやつだったわ」
俺と北山の関係なんて、ただの同僚でしかないし、北山が犯人に撃たれるなり、刺されるなりして、その結果俺に何らかの利益があるなら喜んで北山の死を受け入れる。
「やっぱり、俺この会社に来て正解だったわ」
「いやいやいや、若干人間不信に陥りそうな話しておいて、その一言でまとめるのは無理があるわ」
「まず、お前っていう存在に会えただけでも正解だわ」
「きめえ」
「これから人がちょっと良い話しようとしてんだからその嫌悪感を露呈した表情を何とかしろ」
こんな人間に、お前に会えて嬉しいよ、と言われてもこっちはちっとも嬉しくない。むしろ恐ろしい。
「2年間も一緒に仕事してるのに俺はお前のプライベートの携帯番号もメアドも知らない。なにも知らない」
「知ろうという思考に一度も至ったことが無いからな」
「奇遇だな、俺も一緒だ」
「お前と同じ思考であることだけは避けたい状況だったな」
「何はともあれ、そんな他人との関係構築を好まない俺にとってお前はすごい貴重なんだよね」
「いやなに勝手に終結させてんだよ。終わりだと思うなよな?こんな人間と今後仕事していかなきゃいけない俺の身にもなれよ」
ギロリと睨んでも、どこか楽しげにビールを飲み進める北山の目の前には空き缶が幾つも転がっていた。
「てめえ、俺の分のビールも飲んだだろ!!ふざけんな!!」」
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たいやき(プロフ) - 藤北目当てで読んだのに、『春』が1番好きで、何度も読み返しています!!あまり玉ガヤのBLは意外と読んだことがなかったので新鮮だったのと、『春』の藤ヶ谷くんがどたいぷすぎました。これからも頑張ってください! (2019年10月13日 1時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - まきさん» コメント頂いていたのにお返事遅れてしまい大変申し訳ありません(*_*)! 短編の方で思いついた時にでも書いていこうかと思っておりますので、是非楽しみにしていただけると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2018年10月22日 17時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。以前に一回読んで、また読みたくなってしまい、読み返しました。とてもかわいい藤ヶ谷さんを見れて、楽しく読ませて頂いてます。『春』の続編を勝手ながら期待しております。 (2018年9月19日 11時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 白雪さん» コメントありがとうございます!私の中で藤ヶ谷さんは受けだと思っていて笑 北藤、玉ガヤ大好きなんです笑 そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - わたリンさん» コメントありがとうございます!お返事遅れてしまい大変申し訳ありません( ;∀;)!春の続編いつか書きたいと思っておりますので、楽しみにしていてください! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年4月16日 21時