2人の少しだけ長いお話

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「俺さ、駄目なんだよね。人と必要以上に関係を持つのが」

「は？」

「誰に対しても、これ以上関わりたくない、っていう距離があって。それ以上の関係になったから、前の会社辞めた」

「いや、どうでも良い話の以前にまず意味が分からないです。通じてないです、僕には、何も伝わっておりません」


んー、何て言うんだろ、と北山はソファに寄っ掛かりながら、２本目のビールに手を付けた。


「俺のチームが進めてたそのプロジェクトは成功したんだよ。はい、じゃあ次も期待してますよ、ってなるわけ。チームの士気も高まって、俺ら北山さんにどこまでも着いていきますって雰囲気だよね。

そこで俺はこれ以上近付いて欲しくないな、って感じた。」

「どういうことだよ」

「恋人とか、親友とか、そういう誰かにとって大切な存在になりたくないんだよね。

だから部下に必要とされてる存在に自分がなってると思ったから辞めた。

誰かの人物相関図のどこにも俺はいたくない」


そう淡々と話す北山は、俺がいつも嫌味をぶつける北山と同じ人物には決して思えなかった。


「次の依頼が来る前に、退社するつもりだったから、そんなときに社長からヘッドハンティングの話があって、やって来たってわけ」

「引き留められなかったのかよ」

「そりゃあ、うんざりするほど。給料も社長から提示されてた額よりも大きな額出して来るしな。

けど、俺にはもうなんの未練も無いし、そこまで必要とされてるって感じれば感じるだけ俺にとっては逆効果なわけ」


そう言われると、思い当たる節は幾つもあった。

出勤と退勤時間は決まっているものの、業務内容は個々で依頼をこなす会社だから、昼休みの時間は各々自由にとる。

それでも北山が誰かと昼飯を食べている姿を見たことがない。

仕事終わりにプライベートな誘いで誰かと飲みに向かう姿も見たことがない。

他愛も無い話を、薄っぺらい関係の同僚としている姿だけ、俺は見てきたのだ。


「ドン引きしてる？」

「してる」

「だよな、俺も自分の性格嫌いだもん」

「性格歪んでるだろ」

「口の悪さはお前に負けるけどな」

「え、何それ冗談ですか、いや今全く笑えないんすけど、怖い怖い。ここの部屋にカメラとか仕掛けられてないよね」


北山はいつもの大きな笑い声で豪快に笑っているが、全く笑えない俺は、北山を凝視した。

人間不信に陥りそうである。
何度も言うが、世間はクリスマスである。

俺のサンタさんは一体何処にいるんだ。

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