検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:243,041 hit

ページ7

“ご迷惑おかけするかもしれませんが、宜しくお願いします。”




そう律儀に挨拶をして、隣の部屋に消えていった藤ヶ谷さんに対し、俺は『イケメンだけど変人』という印象を最後まで拭うことができなかった。


しかし家にいても食べるものが無かったので、藤ヶ谷さんから頂いた蕎麦をありがたく食べることにした。

鍋に水を入れること自体もう数ヶ月ぶりな気がする。


沸騰するのを待っていると、スマホが鳴った。画面に表示されていたのは研究室の後輩の玉森で、スピーカーにして電話に出る。







『あ、もしもし?ミツ先輩?』
「おう、どうした?」
『今、解析してるんだけどさ、何かピークが全然取れなくて。』
「あー…配合変えたから、結晶にならなかったのかも。飯食ったら行くわ」
『はーい。待ってまーす』







本当は部屋の掃除でもしようかと思っていたけれど、どうやらその計画を実行することは困難なようで、蕎麦の封を切りながら溜息をついた。






_____







「ごめんねー、ミツ先輩、ようやく昨日帰れたのにまた呼んじゃって」
「ん、良いよ別に、家いてもやる事ねえし」







研究室に置いてある履き潰したサンダルに履き替え、パソコンの前に座る玉森に近づいた。

彼は研究室に住み着くことを嫌い、どんなに遅くなっても絶対に家に帰る。毎朝、すっきりした顔でやってくる玉森は眩しいくらい清潔感に溢れている。






「ここなんだけどさあ、前の配合の時だとここでピーク出てたんだよね」
「ああ、確かに。んんー、こっちの機械で解析かけるか」
「うわあ、そっちの機械めっちゃ時間かかるじゃん…今からかけたら、……げ、明後日の夜中とかだよ」







時計を見上げて露骨に嫌そうな顔をする玉森は、今年から俺と同じ研究グループに配属され、論文の出来は群を抜いて優秀だ。







「まあ、仕方ないって。」
「はー、まじか、明後日彼女泊まりにくる予定だったのに……」







ぶつくさ文句を言いながらスマホを操作しているのは、きっと彼女に断りのメッセージでも送っているのだろう。







「っていうか、彼女いたんだ?」
「え、いるよ。」







当たり前じゃん、と言わんばかりの後輩に対し、何といえば良いのか分からず、ふうんと適当な相槌を打って自分のパソコンを起動させた。


彼女、ねえ。







「そういうミツ先輩は彼女いるの?」
「…いるように見える?」






____

・→←引っ越し蕎麦



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (372 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
709人がお気に入り
設定タグ:藤北 , キスマイ , 北藤
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます!高嶺の花シリーズ、書き始めた当初は短編で終わる予定だったんですがそう言って頂けて嬉しいです(*^^*) 誕生日の後日談は下書きに眠っているのでもうすこし書き加えたら出しますね〜! (2019年9月26日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ふじみつさん» コメントありがとうございます!お返事すっかり遅くなってすみません。゚(゚^ω^゚)゚。!魔法使いさんシリーズに探偵シリーズに…この前更新したのはいつだっけ…という作品ばかりでお待たせしてすみません!いつか書きます!笑き (2019年9月26日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - こんにちは、魚さんの作品いつも更新楽しみにしてます!個人的に高嶺の花シリーズがとても好きで、なん度も読み返してます。北山くんの誕生日の件の続きがとても気になります、、、ぜひ見たいです^ ^ (2019年9月26日 10時) (レス) id: 1e2dbff765 (このIDを非表示/違反報告)
ふじみつ(プロフ) - こんにちは。みっくんのお誕生日になんて素敵な物語!ありがとうございます。私「春」がとても好きで、教師さんも、バーテンさんも、探偵さん、魔法使いも〜〜!完結したばかりですが、色々続き待っていても良いですか? (2019年9月19日 11時) (レス) id: a043f1bcd7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ぴこさん» コメントありがとうございます!わー!先生パロのお話も読んで頂けたとは…( ;∀;)!嬉しいです、あの2人のお話もまた書きたいなと思っていたのでやる気が出てきました笑 リアルな2人の関係性はこんな感じかな、と思い甘めな設定で書かせて頂きました(*^^*) (2019年9月18日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年7月19日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。