失いたくないから (ページ7)

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今日はやたらと非日常なことが多い。

昼休み、向かい側の屋上に松村くんがいないなと思っていたら、その向かい側の屋上、つまりは私のいるところの扉が開いて松村くんが入ってきた。

「俺今日はこっちで食べるわ。」

『そうなんだ。』

「朝と同じこと訊くけど、土曜日やっぱスーパーで俺のこと見つけたでしょ。」

松村くんの確信したような目に首をふることしかできなかった。

「わざわざあそこでレジ変わる必要なかったよね。俺のとこ比較的レジ空いてたし。」

『もしかして見られてた？』

「視界の端のほうでね。」

私は飲酒運転がばれた瞬間の人の気持ちが分かるような気がした。

松村くんは今度は得意げな顔で笑っていた。

「別に俺君にバレたからって嫌じゃないから。それに、俺がバイトしてる理由だってたいしたことないから特に心配してくれなくてもいい。」

『松村くんはエンパスなの？』

至って真面目に訊いたけれど、松村くんにはほんと佐藤さんって面白いよねと言いながら笑われた。