失いたくないから (ページ21)

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「そういえばさ、ずっと謝らないといけないって思ってたんだけど。」

そう松村くんが話しかけたけど、私には思い当たる節がなかったから疑問符を浮かべたような顔をしたら特に気にしてなかったんだと安心したようだった。

けど、何を謝りたかったのか気になったから訊いてみると松村くんのせいで私がジェシーくんと慎太郎くんに絡まれるようになって、私が迷惑だと思ってたら申し訳ないなと思っていたらしい。

何も気にすることなんてないのに。

「それにしてもジェシーも慎太郎もだいぶ懐いてるよな。二人とも後輩だからそんな交友関係とか知らないけど佐藤さんには特別って感じがすごい伝わる。」

『飼い主だと思ってるのかな。』

と冗談混じりに言うと松村くんは多分違うと否定した。

「俺もあんな分かりやすい男だったら良かったな。なんでこんな回りくどいことしか出来ねえんだろ。」

いつもより少しトーンの低い声に、初めて松村くんの弱い部分を垣間見た気がして嬉しかった。

それと同時にそんな回りくどいことをしている誰かも知らない相手に少し嫉妬した。

この嫉妬は唯一と言ってもいい波長の合う友達が誰かに取られることによるものだと自分に言い訳をした。