失いたくないから (ページ19)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:12,668 hit

19 ページ19

［Aちゃんこの後も一緒に観戦しない？］

『ごめん。ちょっと約束があって。』

［え？何？彼氏？Aちゃん彼氏いたのか〜。知らなかったよね？樹くん。］
　

彼女は約束がある＝彼氏という思考回路になっているのか、一人で間違った解釈をしてしまったみたい。

それに加えて、近くにいた樹くんも巻き込んで誤った情報を広めそうになっていたから慌てて止めた。

樹くんは案の定話に乗ってきて私の行動で余計に疑わしくなったらしく、誰なんだと問い詰めてきた。

「俺だよ。」

意外にもその質問に答えたのは松村くんだった。

急に現れてさらっと爆弾発言をした松村くんは二人の息の合った驚愕の声を浴びさせられていた。

けれど、松村くんはそれも眼中にない様子で私に向かって早く行こうと急かしてきた。

松村くんの雰囲気が逆らうことを許さなかったため私は無言で松村くんについて行こうとしたけど二人はそうはさせまいと私達の腕を掴んだ。

にもかかわらず松村くんは動揺せず言い放った。

「別にお前らが思ってるようなやましい関係ではないから安心して。じゃあ行くぞ。」

私はまたまた圧倒されて、屋上へと続く道を松村くんの広い背中を見ながら無言で歩いた。