ガラスの靴が窮屈で【NJ】

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元々美術館に来る人たちは絵を見にきていて、

そこに芸能人がいても気づかないし、気づいてもそっとしておいてくれることが多い。



そこまで広くはないギャラリーをゆっくり観てまわる。

紹介制ということもあるのか人もまばらで、スタッフも受付とアートディーラーくらいで、


気に入った絵を2点ほど買う時に、自分と同世代くらいの女性のアートディーラーに挨拶をした。



個展を開く時にはSNSで告知をしているらしく、

アカウントを教えてくれ、次からは誰も間に入れなくて大丈夫ですよって多分誰にでも伝えるであろう言葉に、

Aさんと連絡とる口実には使えそうにないなってぼんやりそんなことを思った。



買った絵の一点は家の玄関に、もう一点は事務所の作業室に飾った。


作業室にはもう一つ、彼女が忘れていったヒールを棚の上にポツンと置いている。



ブランドものだからか、片方だけなのが効いてるのか、


ただオシャレなインテリアと化したのを見て、


飾っているうちはどんなに忙しくても、

あの日のことも、彼女のことも、忘れることはない。

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