とある隊士の誕生譚30 ページ30
鎚型さんから手渡された日輪刀を鞘から抜き、鞘を置いて刀の柄を両手でしっかりと握りしめる。すると、刀身が窓から入ってきた日の光を反射して強く輝いたように見えた。
「ほう……」
「これは……綺麗だね。」
「これが……僕の日輪刀の色……!」
僕が握りしめた日輪刀は元々の色から美しい白銀に変化していた。
「白銀だな。」
「白銀だね。」
「白銀ですね。あ、白銀にはどの呼吸の素質があるんですか?」
僕がそう聞くと、二人は顔を見合わせて困ったような表情を浮かべてこちらに視線を戻した。
「それが……白銀っていうのは僕は初めて見たんだ。鎚型さんは?」
「それがなぁ……俺も長いこと刀鍛冶やってるが白銀ってのは初めて見たな。白なら霞の呼吸ってのがあるんだがなぁ……すまねえ。」
「そうですか……ですが、これで僕も晴れて鬼殺隊の一隊士になったということですよね?」
「その通りだね。これからも悪鬼をこの世から滅殺していこう。」
「まぁ……なんだ!その刀大事に使ってくれりゃあ俺としては文句無しだ。俺は大して気にする方じゃないがだからといって心込めて打った刀を雑に扱われちゃあ刀を打つ気も失せるってもんだからな。」
「はい!大事に使わせて頂きます!」
鎚型さんはガハハと豪快に笑って僕の背中をバシバシと叩いた。
「その言葉が聞けて満足だ!じゃあ俺の仕事はこれで終わりだな。流木、眼鏡、またいつか会おうぜ!」
「ええ、また。」
「はい、またお会いしましょう。」
「おう、じゃあな!」
そう言うと鎚型さんは残りの荷物を持って去って行ってしまった。
「さて、折角日輪刀を手に入れたんだ。試し切りくらいはしておこうか。」
「分かりました。」
外にでた僕は訓練用の藁を用意して日輪刀を鞘から抜き正面に構える。息をゆっくりと吸ってゆっくりと吐き集中する。そして横一閃に切った藁の切断面はこれまでのどの切断面よりも綺麗だった。
「うん。流石刀鍛冶の里の人の仕事だね。それに刀だけじゃなく眼鏡も今まで僕が見たどの太刀筋よりも綺麗に刀を振れていたよ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ鎹鴉が鬼の情報を届けてくれるまではいつも通り鍛錬するとしようか。」
「はい。」
こうして僕は入隊試験を生き残り、隊服と白銀色の日輪刀を手に入れ、鬼殺隊の隊士になることができた。僕の素質に合う本当の呼吸は分からなかったけど、それはこれから自力で見つけるしか無いだろう。
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作者名:めがねとかがみ | 作成日時:2020年8月5日 18時