魔王の勇者 (ページ10)

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昔話の感想は…… ページ10

魔王様の説明は続く。

「歴史上最強の魔王が討たれた後にも、何度も小競り合いではなく戦争と呼べる戦いが起こった。そして四十五年前の争いで先代魔王であった私の父が新たな勇者に討たれた。初代勇者ほどでは無くとも、勇者という存在は魔王が即位すると時を近くして現れ、着実に実力を付けながら作戦の尽くを潰していく疫病神と言える存在。この争いの歴史が確かに存在した過去である故に人族であるのなら我ら魔族にとっては敵と見なすのが普通。分かったか？」
「……分かりました。ですが何故争いは止まらないのでしょうか?」

　僕がそう問い返すと、控えていた魔族の中の老練そうな男性が少ししわがれているが、ハッキリとした声で答えた。

「もう、お互い後には引けんのじゃよ。戦いが始まった数千年前から……歩み寄ろうとした者は皆国の裏切者と言われて滅ぼされてしまったのじゃ。一部や片側ではなく両種族全体が望まねばどうしようもない終わらぬ争いなんじゃよ。」

　……重い……重いなぁ……でも！

「なるほど……」
「もう質問はないかの？」
「では……各種族の平均的な寿命を。」
「魔族が200年、人族が70年、エルフ族が300年、獣人族は種にもよるが50年だ。しかしなぜそんなことを聞いた?」
「相互理解の為です。自分がただただ歩み寄ろうとしても敵になるような互いの価値観の違いは理解しないと厳しいですから。」
「歩み寄る？勇者であるお前がか？」

　少し不機嫌そうになる魔王様。そして周囲からの視線が勇者の話あたりでたまに殺気を感じるような気が……しなかったことにしておこう。

「自分が生き残るためです。」

　魔王様は一泊を置くと……

「魔族と人族の昔話を聞いてなおそんな事が言えるか……気に入った。勇者よ、これからは私達魔族のもとで生活しないか？」

　その一言に、流石の魔族さん達も動揺する。
そして魔族さん達が騒ぎ出した次の瞬間、魔王様が立ち上がる。おもむろに片手を上げて魔族さん達を制し、威厳を持って告げた。

「こ奴は魔族を敵として見ていない。なら勇者という力、欲するのは間違いか？」

　こんなの……応えるしかないでしょ！

「魔王様、喜んで生活させて頂きます。ですが、勇者では無く、一人の人族として扱っていただけると嬉しいですね。」
「なら名を申せ。」
「雨野流真です。流真が名前です。」
「では流真、魔族にとって良き友となれよ？」
「ハイ！」

　こうして僕は、魔族と共に生活することになったのだった。