魔王の勇者 (ページ21)

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久々の訓練場は…… ページ21

紹介状を見るのを止めて窓から外を見る。ここから見る自然は召喚された城から追放される前に白の窓からチラッと見えた景色と大差無い。それに城下町の方も建物の雰囲気こそ違えど同じように活気に溢れている。一見平和そのものなのに、人族と魔族の領土境ではこの景色とは正反対の小競り合いが続いているらしい。大きな争いはしばらく起きていないと聞いたがその状況も召喚された勇者がその争いに参加してしまえば壊れてしまうだろう。

「アイツら次第でこの均衡が崩れてしまうのか。偶然アイツらと物理的に別れた僕はこの争いから逃げるも止めようと奮闘するも自由なんて皮肉だな。」

　魔王様は恐らくこの魔王城にいることを争いが激化しない限り許してくれるだろう。だけどそれに甘んじ続ける訳にはいかない。だからここから出ても一人で生きていけるよう身を守る術を身につけなければならない。

「やっぱりちゃんとした剣術は教わったほうが良いよな。この招待状……教わる場所が書かれて無いのか。仕方無い、騎士団の人達に聞きに行こう。」

　外を見るのを止め、部屋を出て騎士団の訓練場を目指して歩き始める。

「着いた。」

　最初にここに来た時はかなり迷ったが、今回はすんなり辿り着けたことにここでの生活にも馴れたんだな、と少し感慨にふけっているとこちらに気づいたのか木剣を選んでくれた騎士が歩いて来た。

「誰かと思えばあの時の勇者じゃねえか。」
「お久しぶりです。」
「少し見ねえ間に多少筋肉ついたか？木剣は振れるようになったのか？」
「少しは振れるようになりましたよ。あと呼び方は勇者じゃなくて名前の流真でお願いします。」
「分かった。それじゃあリュウマ、本題に入る前にやって見せてくれ。その腰につけてる木剣は前選んでやったやつだろ？」
「そうです。じゃあ振りますね。」

　訓練場の真ん中まで移動し木剣を抜いて上段に構える。

「セイッ！」

　真上から左下に素早く振り抜く。

「ハァッ！」

　左下に振り抜いた木剣を右に振る。

「フッ！」

　最後に右下から木剣を返して左上に向けて振り木剣をピタリと止める。

「ほぅ……。」
「ザッとこんな感じです。」
「うん、なるほどな。リュウマは大分筋力も体幹も鍛えられたみたいだな。」
「毎日棒振って棒が余裕で振れるようになったら木剣を振るようにしました。あとは筋トレくらいですね。」
「この短期間にそれだけでこの成長か。」

　その後も僕はしばらく質問攻めにされたのだった。