魔王の勇者 (ページ13)

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木剣の在処は…… ページ13

「お、あったあった。」

　魔王城を散策(迷ったとも言う)し、一時間半ほどかかって中庭から繋がっている訓練場に辿り着いた。まさか一度通ったお洒落な建物や花壇があった中庭から繋がってるとは思わないだろう。

　そういえば、見つからないからと休んだ建物、確か……東屋って書いて「ガセポ」だったかな？ラノベで読んだ記憶が正しければあってるはず。つまり魔族達の建築技術は少なくとも中世のヨーロッパ並にはあるということだろう。こんなことなら世界史もっと真面目に勉強しとけば良かったな……。

「まあたどり着けたからいっか。さてと……すみません、何方かいらっしゃいますか？」

　訓練場には誰もいなかったので近くの扉をノックしてみる。

「ちょっと待ってくれ。……ん？お前はたしかはぐれの……」
「最近この魔王城に住むことになった勇者だな？」

　出て来たのは頭に巻き角を生やしたゴツい騎士らしき人だった。部屋の中には筋骨隆々の人……魔族が大勢いた。

「はい。まあ勇者と言われてもちょっと前までは自分の故郷で普通に暮らしてたので実感は無いんですけどね。」
「そんなもんか。でもお前も可哀想なやつだよな、いきなり呼び出された挙げ句捨てられたんだろ？」
「あ、あはははは……」
「んで？その勇者様がどうしたんだ？」
「暮らしに慣れて手持ち無沙汰なので、訓練をしてみようかなと。剣は触ったことが無いのでできれば教えて貰えればと思ったんですけど、忙しいなら訓練用の木剣があれば貸して頂きたくて。」
「なるほどな。ならこっちに来ると良い、お前に合う木剣を見繕ってやる。」
「そうだな……教えるのは暇してる引退したジジイ共がいる。紹介状を書いてやるから今度訪ねてみろ。」
「ありがとうございます。」

　そして最初に出てきた方に付いて部屋の奥の扉をくぐると武器庫らしき場所があった。

「ここは？」
「いくつかある武器庫の一つだ。さっきの部屋は休憩所だ。まあ訓練の合間や夜間の城内警備当番の仮眠所として使われてるからあそこにあるんだ。俺ら騎士団の詰め所は別にある。」
「なるほど。」
「さて、木剣はこっちだったな。よっと。」

　彼が持ってきたいくつかの剣立てには鞘に収まった大小様々な木剣があった。

「こん中から手に馴染むのを選べ。筋力がつくまでは同じ長さの棒を使え。体を壊しちゃ元も子もねぇからな。」
「分かりました。」

　その後。僕は選んだ木剣を抱えて騎士の方々にお礼を言い、部屋に戻るのだった。