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「樹くんは？何してたの？」
「今日はリハ。」
「またスタジオ籠もって？」
「そ、5時間くらい…疲れた」
うす暗いホテルの部屋の天井を見上げると、少しだけ夜の光がもれていた。
「…Aさ」
「……うん」
「この前ごめん。ちょっとカッとしてた」
「…うん。」
「Aがああ言うのも当然だし。」
「…樹くんにいつも言わせてばっかりだよね、私」
ずっと変わってない。
彼がいないと、私はいつでも泥沼に足を突っ込んだまま動けないのだ。
昔から。
「Aが考えてることも、仕方ないことだって分かってるから」
「…樹くんが言ってたことは本当に正しくて、私はやっぱりずっと同じところから動けていないのかもしれない」
「そういうことを言いたいわけじゃなかったんだよ、ごめん。本当に」
「私が悪かったの、だから私の方こそごめんなさい」
「俺はただ、」
「うん」
「本当に好きなだけなんだよ」
胸の奥を、何か強い力で掴まれたような感覚になり、思わずこみあげた涙を堪えた。
彼の声は凛としていた。
「本当にただ一緒にいられればいいし、Aがちゃんと笑っててくれればそれを見ていたいし」
「…うん」
「Aは？俺のこと、もう嫌になった？」
それは少しだけからかいを含んだ声色で、愛おしさと苦しさともどかしさで逆流しそうな心をおさえながら口を開いた。
「好きだよ。大好き、本当に好き、どうしようもないくらい」
「うん」
「正直、こんなに誰かを好きになったのが初めてで、自分でもどうしたらいいのか分からないの。分からないけど、樹くんを好きってことだけは分かるの。それは本当なの、信じて」
「うん、分かってるよ」
「大好きだから一緒にいたい」
彼と一緒にいて、永遠にこうしていたいと何度も感じた。
宝石みたいなきらめく瞬間を繋ぎ合わせて、永遠に閉じ込めておきたいとも思った。
大声で話したり、笑ったり、そんなことはなかったけれど、ただ近くにいて心をつなぎ合わせているだけで、2人しか分からない美しい音楽のようなものが生まれていた。
人生にこんな幸せがあったなんて、思いもしなかった。
「でも、大好きだから一緒にいたくないの」
彼はまた、少しだけ笑う。
「…なんか難しくなってきた、哲学みたいな」
「私も自分じゃ分かんない…」
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みみ - 定期的に読み返しています！大好きな作品で続きが気になって仕方ありません！ (2022年5月14日 1時) (
レス) @page18 id: c42b45f5d9 (このIDを非表示/違反報告)
るか(プロフ) - 読ませていただいてます。 (2022年4月30日 13時) (レス) id: 6e3ccbc5ee (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 大好きな作品です！！！！何度も読み返しております。 (2022年4月30日 2時) (レス) @page18 id: ff889105d6 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 何回も読み返しています。更新待ってます。 (2022年1月18日 4時) (レス) id: 07e857a9fb (このIDを非表示/違反報告)
Knnnnn(プロフ) - きっと2人とも今すごく辛い状況にいて好きだという気持ちだけではどうにもならない世界が本当に苦しいですが、とにかく2人がこのあと2人の正解をしっかり導き出せることを祈ってます。 (2020年7月16日 21時) (レス) id: 8d750d6dbf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2020年7月3日 21時
