8-�� 前に進む ページ29
・
◇◆◇
一週間後、彼の誕生日当日を迎えた。
0時まで起きてお祝いしてあげようと思っていたけれど、疲れてソファで寝てしまった。
起きた時はベッドにいたので、
彼が運んでくれたのかなと申し訳なく思った。
A「お誕生日おめでとう」
慎「…ん？あ、あぁ、うん」
ベッドルームを出てリビングに行くと、
もう支度をした慎くんがコーンフレークを食べていた。
スマホから一度顔を上げて私を見て、でもすぐ目をそらした。
A「今日遅くなるの？」
慎「あーうんまぁ…」
A「何時くらい？」
慎「7時…いや、8時…」
A「…大変だね」
慎「……Aさぁ…」
A「なに？」
慎「えっと…、いや、ごめんなんでもない」
A「…大丈夫？」
全然目を合わせない挙動不審な慎くんの顔をのぞき込むと、彼は焦ったように立ち上がった。
慎「やば…っ、もう行く、ごめん」
A「…あ、うん」
慎「今日夜、夜…えっと夜」
A「お酒飲まないで待ってればいいんでしょ」
慎「そうなんだけど、えっとまぁ…」
えっと、まぁ、いや…を異常なまでに繰り返して口ごもる彼は、飄々としているいつもと明らかに様子が違う。
A「…どうしたの？」
慎「いや、どうもしない、やっぱなんでもない」
慌てたように首を振って彼はドタバタとリビングを出ていった。
……今、何て言おうとした？
慎「行ってきます」
A「あ、行ってらっしゃい…」
玄関まで見送りに行き、彼がスニーカーの紐をきつく結んでドアを出るときに振り返った。
頭を引き寄せられて、軽く口づけられる。
A「……え？」
近くにある慎くんの瞳はまっすぐ私を見てた。
苦しくなるくらいにまっすぐな瞳で、わけもなく胸が詰まった。
慎「じゃあ、また」
A「…うん」
ドアを出ていくとき、口にする寸前まで言葉が出かけて、でも飲み込んだ。
『また』なんてあるの？
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1250人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月＊LUNA＊(プロフ) - 短編でこんなに素敵な作品になるんですね。感情移入するほどです。 (2020年10月4日 19時) (
レス) id: 039c6da5d9 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - hinatabocco2525さん» あまあまな慎くんなかなか妄想しづらい！ですが…私もいつか書いてみたいです笑 そのときはまた読んで下さいね(^^) (2020年6月21日 22時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - MIYABIさん» 感情移入して頂けたようで嬉しいですっ。これからも頑張るのでよろしくお願いします(^^) (2020年6月21日 22時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - まんまるさん» ネクタイをしめる主人公いつか絶対書きたいです(TT)いつになるか分かりませんがそのときは読んで頂けると嬉しいです(^^) (2020年6月21日 22時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - 蛍さん» こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます！(^^) (2020年6月21日 22時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蘭の花
| 作成日時：2020年4月30日 21時
