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彼があのときのように、小さく息を呑んだ。
あの時、あの瞬間、彼は、私の世界のすべてになった。我慢なんて出来なくて自己牽制すらも出来なくなっていた。
こうなるって分かっていたんだと自分に言い聞かせようとしていた。自分が選んだ道だから、
でも無理だった。
「大げさじゃないよ…、ホントなの。あの時、樹くんのことしか考えられなかった…それでマネージャーと喧嘩して、車飛び出して…電話した…」
「…」
「絶対に来てくれないだろうなって思ってた…だって夜遅かったし…ひどいこといっぱいしたから…なのに…」
「…行ったよ、俺」
涙に揺らめいて滲んでいた東京の明るい光。
彼がいなければ、彼を想う自分でなければ、自分はもう自分ではないと思ってしまった。
すべて鮮明に覚えてる。
震えながら携帯を取り出して、涙が液晶にぽたぽたと落ちていって、自分が出した悲痛な声も
「…うん。そのときに…樹くんが、Aちゃんはずっと、弱いよって…」
「…ごめん。」
「ちがうの、樹くんがああ言ってくれて…弱い自分でいていいよって言われた気がして…」
完璧ではなくてもいいと言ってくれた気がした。
あれが最後のトリガーだった。
「それで…もういいやって思ったの…自分の気持ちに嘘つくの、やめるって…」
「…Aちゃん」
「あの時…好きって…言った…でしょ…？」
「…うん。」
「……もう1回、ちゃんと言う…」
「…うん。」
その途端に考えていた言葉が消え、頭が真っ白になった。なんて言えばいいのか分かんない、でも、伝えたいのは1つだけ
「…樹くんのこと…好き」
小さな声で、震えてて、彼がふっと笑ったのが分かった。彼の手がゆっくり肩を掴んで身体を引き寄せ、自然と彼と向かい合うような姿勢になる。
「…なに？もう1回、言って？」
「……意地悪…」
「散々待ったんだから、ちゃんと言って…？」
彼の手が頬をなで、それが本当に愛おしむような仕草で、胸がぎゅっと締め付けられた。
彼しか見えない
「…樹くん」
「…はい。」
「……好きです」
「…うん」
「大好き」
「……うん、俺も」
顔が近づき、唇が重なった。
首に手を回すと、彼は覆いかぶさるように私の身体を引き寄せた。
熱が一瞬にして身体中にまわり、身動きすらとれなくなった。
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蘭の花(プロフ) - ちょこちっぷさん» 嬉しいお言葉…ありがとうございます。私にとっても大事なこの作品が何か響いていたら幸いです(^^) (2020年3月25日 0時) (
レス) id: 517b3b5b29 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこちっぷ(プロフ) - 久々に占ツク開いて初めに読んだ作品がこれでよかったです。占ツクで沢山の作品を読んできて、泣いたのはこれが初めてです。この作品を読めて幸せです。 (2020年3月23日 0時) (レス) id: cf6328cb96 (このIDを非表示/違反報告)
Knnnnn(プロフ) - ガッツリ書いても全然大丈夫です！読みたいです！ (2019年11月3日 13時) (レス) id: 8d750d6dbf (このIDを非表示/違反報告)
cocona(プロフ) - 全然大丈夫です！！読みたいです！！！ (2019年11月3日 4時) (レス) id: 6508ac86aa (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 書いて大丈夫です！！逆に書いて欲しいです！！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: c8d254b03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年9月27日 19時
