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「……、」
「…今の…ほんと…？」
「………じゃあ…信じなくていいよ。…帰るから、」
「…待てよ、違うって」
なんとも言えないような、安堵とも喜びとも切なさとも違う感情を浮かべて彼が、ほとんど泣きそうに、そう聞くから
恥ずかしさがこみ上げて後退りすると、肩を掴まれて引き寄せられた。強い、力
顔が近づいて、目を閉じた。
唇が触れる。
柔らかい感触は一瞬で、すぐに離れた。
「……、」
「…もっかいしていい？」
「……うん。」
後頭部に彼の手が回り、ゆっくりと唇が近づいて重なった。
長い間 彼の体温や吐息を感じ、身体が疼いた。
む、と柔らかく唇を食むように彼がキスを繰り返し、服の裾を掴んで身体を支えた。
彼の舌が口を割り、1つ1つ歯列をなぞり、奥で固まっていた舌にゆっくりと絡む。
水音がして、道でなんてことしてるんだろうとぼんやり考えたけれど、彼のこと以外、うまく考えられなくなった。
彼の背中にぎこちなく手をまわすと、彼は一度くちびるを離して「…止まれなくなるんだけど、」わたしは「……うん。」もう一度くちびるを塞いだ。
手を繋ぐときや抱き合うときとも違う感覚がこみあげる。
重なっている唇では、ただひたすら彼の気持ちや自分の欲望なんかが溶け合って、何か別の1つの生き物になってゆく感覚だった。
彼のことが苦しいくらいに好きだと思った。
好きという気持ちが浮かび上がるたびに、胸は締め付けられ、苦しかった。
あの時のように子供ではなく、でも大人でもない2人は、心の中の熱を上手く解放する術を持たなかった。
だから唇を重ねて、確かめ合う。気持ちを
ただこの熱を閉じ込めておくには、東京という街はひどく狭くて
ただ唇を重ねたまま途方にくれそうな淡い夜に身を沈めた。
樹くんの香りも声も体温もすべて、本当に、苦しいくらい好きだと思った。
「……っ、ん…」
「……」
気持ちはどんどん膨れ上がり、破裂しそうなほど大きくなり、次第に、もう彼とこのまま一緒にいることしか考えられなくなった。
このまま、どこにも行かず誰にも会わず、永遠に時間がつづけばいいのに。
何度もキスをしながらそう、思った。
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蘭の花(プロフ) - ちょこちっぷさん» 嬉しいお言葉…ありがとうございます。私にとっても大事なこの作品が何か響いていたら幸いです(^^) (2020年3月25日 0時) (
レス) id: 517b3b5b29 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこちっぷ(プロフ) - 久々に占ツク開いて初めに読んだ作品がこれでよかったです。占ツクで沢山の作品を読んできて、泣いたのはこれが初めてです。この作品を読めて幸せです。 (2020年3月23日 0時) (レス) id: cf6328cb96 (このIDを非表示/違反報告)
Knnnnn(プロフ) - ガッツリ書いても全然大丈夫です！読みたいです！ (2019年11月3日 13時) (レス) id: 8d750d6dbf (このIDを非表示/違反報告)
cocona(プロフ) - 全然大丈夫です！！読みたいです！！！ (2019年11月3日 4時) (レス) id: 6508ac86aa (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 書いて大丈夫です！！逆に書いて欲しいです！！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: c8d254b03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年9月27日 19時
