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「…なんで？ごめんってなに？」
「…だって…」
「今…誰も聞いてないよ」
彼の傷ついたような顔を見たら、心はぎゅっと掴まれたように痛んだ。
痛くて、息ができない
「…だめなんだよ…」
「Aちゃんの本当の気持ちを…俺は知りたい」
「本当の気持ちなんて…ない」
嘘だ
こんな近くで彼の瞳を見つめることが、こんなにも苦しく切ないことなのだと初めて知った。
「…、」「だめ」「…、っ、じっとしてて」「だめ…っ」樹くんの吐息が、自分のにまざる
肩を強く掴まれて反射的に身をよじってバランスを崩すと、彼の手が背中に回って一瞬身体を預ける格好になる。
離れようとして身動ぎをすると、今度は手が後頭部に回って引き寄せられた。
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唇が触れる
何度も
愛おしむように、彼は何度も
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リップ音が聞こえて、柔らかい感触を何度も何度も感じた。くっつけて離して、名残惜しくまたくっついて、少しだけ口を開けて拙く舌を絡ませた。
体温が上がる。
息が苦しい。
頭の片隅は冷静だった。
こんなのだめだと、分かっている自分はいた。
なのに、なのに離れたくない…
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「…っ」
樹くんの手が腰に回ったとき、パチンと頭の中が冷静になった。
肩を出せる限りの力で押し返すと、その反動で砂浜に身体が放り出された。
星が降ってくる
真っ黒に塗りつぶされた空にほろほろと輝く星が、滲んだ。
瞳を閉じると、灼き尽くされた白い光が浮かんでくる。
息が止まりそうなほど、胸は抉られた。
「…ごめん…」
「…謝らないで…、」
「Aちゃん、」
「……」
「泣かないで…」
そっと腕を引っ張って身体を支えて立たせてくれた樹くんが、ぼやけて見えた。
砂浜に、涙が落ちていく。
「…ほんとにごめん」
「樹くんは悪くない…」
「ごめん」
顔をのぞきこまれて、やめてと顔を背けると触れていた手が離れた。
声は震えていて、涙は止まらなくて、だだっ広い夜空の下で途方にくれた。
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その日、家に帰って樹くんからもらった花を捨てた。丸いメッセージカードに彼の名前だけ書いてあって、彼がそこにこめた思いを知っていながら、捨てた。
どうしてわたしだけ、と
この世界は息苦しい
こんな気持ちを押し込めて…、閉じ込めて、この気持ちの意味すら分からないふりをして、明日もまた笑顔をつくるんだろうなと思ったら、涙が止まらなくなった。
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蘭の花(プロフ) - Lさん» 気づくのが遅くなりました汗 本当の小説のようなんて本当に嬉しいです。今後もまだまだ続くので、ゆっくり読んで下さいね(^^) (2020年5月8日 18時) (
レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
L - 今まで読んでいた夢小説の中で1番文章がしっかりしていて、言葉選びもほんとの小説のようですごく感情移入して読めました。この先どうなるのか気になってしまい、一気に読んでしまいました。続きも楽しみに読ませていただきます！ (2020年4月29日 20時) (レス) id: 3835f70abc (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - h_r_k_yさん» ありがとうございます(^^) (2019年9月23日 14時) (レス) id: 517b3b5b29 (このIDを非表示/違反報告)
h_r_k_y(プロフ) - 一気に読んでしまいました^ ^更新楽しみです！ (2019年9月23日 13時) (レス) id: 4d2b3f43a7 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - ひかるさん» ありがとうございます(^^) (2019年9月14日 20時) (レス) id: 517b3b5b29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年8月23日 21時
